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■「衛気(えき)」の力を高めて花粉症にならない体質作りを
 日本では花粉症が猛威を振るっています。これには、環境の変化、飛散する杉花粉量の増大といった外的な要因があることは確かですが、それと同時にストレスの増大、肉食の増加、運動不足などからくる体質の変化もたいへん深く関係しています。
 これまでの花粉症対策は、花粉と接触しないようにするとか、抗ヒスタミン剤によってかゆみやくしゃみ、鼻水などの症状を抑えるといったことが中心でした。しかし、これは一時的な対策でしかありません。根本的に体質を変え、発症を予防するにはどうしたら良いのでしょうか。
 中医学(中国漢方)には花粉症になりにくい体質作りの方法があります。それは「衛気(えき)のパワーを増強する」という方法です。体にはもともと外的から身を守る力が備わっています。その中には「気」(生体エネルギー)の一種である「衛気」といわれるものがあります。衛気は体表部をくまなくめぐり、皮膚や粘膜の防衛力を高めます。体を目に見えないバリアですっぽり覆う状態といえるでしょう。この衛気の力が弱くなると、バリア力が弱まったり乱れたりして、花粉やウイルスなどの外部が侵入しやすくなります。薬理研究によると、衛気の力が弱くなった実験動物では、呼吸器の機能や抵抗力(免疫力)が低下している様子が観察されます(詳しくはこちら)。明らかに衛気の力と抵抗力には相関関係があることがわかります。つまり、花粉症を予防するには、花粉症を生ずる外因を避けるだけではなくて、弱っている衛気のパワーの強化が重要だという事です。それには、バランスの取れた食事、休養、運動、さらに状態によっては、健康食品や漢方薬の力を借りて体質を改善する必要があるわけです。



■衛気を強化する生薬、漢方薬ナンバーワンは、補気薬の黄耆
 生命の活力「気」を生み出す作用がある生薬や食品にはどのようなものがあるのでしょうか。
 横綱クラスといっていいのが、黄耆と朝鮮人参。共に代表的な補気薬であり、多くの滋養強壮剤や栄養ドリンクなどに加えられていますからその名を聞いたことがある人はたくさんいるでしょう。黄耆の「気」を高める効果は確かですが、黄耆ばかりを単独でとるよりも、他の生薬を組み合わせて使うほうが、さらに効果が期待できます。
 例えば、白朮は消化機能である脾の働きを改善して、黄耆の作用をサポートします。防風を組み合わせれば、「気」を強めるとともに、風邪の侵入を防ぎ黄耆とコンビを組んで、「気」を皮膚の表面近くに巡らせる働きを盛んにします。

■黄耆を中心にした名処方「玉屏風散」
 この黄耆を中心にして白朮と防風を組み合わせた処方「玉屏風散」は、中国で花粉症や風邪、インフルエンザ、喘息などの病気の予防に用いられます。「玉屏風散」の名称は、屏風としての働きが宝玉のように素晴らしい、あるいは宝玉で出来た貴重で素晴らしい屏風という意味です。

■黄耆を主薬にした「衛益顆粒」の免疫機能調節と粘膜保護の効果がくっきり
 黄耆は、たいへん使いやすい生薬でありながら優秀な効能を持っているために、応用例も多く研究事例も生薬の中では群を抜いて豊富です。その中で、前頁で紹介した「玉屏風散」を製剤化した「衛益顆粒」(日本に医薬品として正式に輸入されている)についての動物実験の報告をご紹介しましょう。漢方薬の持つパワーが伝わってきます。報告:中国中医薬研究院広安門病院分子生物学研究室の呉志奎教授ほか。

1.冷風をあてて免疫力を低下させたマウス実験対象マウスは、冷風刺激の影響で免疫機能に関係する免疫器官(脾臓と胸腺)の重量が低下したが、実験3日前から衛益顆粒を与えていたマウス(以下「衛益服用マウス」)は、対象群に比べて低下しなかった。このことは、衛益顆粒には寒冷刺激から体を守る働きがあることを示している。

2.鼻炎ラットモデル実験黄色ブドウ球菌を鼻に注入して作った鼻炎ラットモデルを用いた実験。衛益顆粒を与えなかった群は、鼻粘膜と気管支粘膜の上皮が脱落し粘膜は充血して中世白血球とリンパ球の浸潤が見られるが、衛益服用ラットは、正常ラットとほとんど変わらなかった。(写真・右)

3.ウイルス感染のマウス実験インフルエンザウイルスをマウスの鼻から注入。衛益顆粒を与えなかった群の死亡率は71%、衛益服用マウスは36%で死亡率が約1/2であった。インフルエンザウイルスの増殖も抑制された。


2鼻炎ラットモデル実験正常ラットの粘膜はしっかりしている(上)。鼻炎ラットモデルの粘膜は上皮が剥がれ落ちている(中)。衛益顆粒を与えた鼻炎ラットでは、荒れが少ない(下)。


4.慢性気管支炎に対する治療作用実験
化学物質(SO2)の刺激によって慢性気管支炎マウスモデルを作った。衛益顆粒を服用させたマウスでは炎症反応が軽く、IgAが増えると同時にマクロファージの貪食能力が増強された。(写真・右)


4マクロファージの貧食作用の実験対象群では、異物に対しマクロファージの貪食活動が弱い(上)。衛益顆粒マウスでは、マクロファージが盛んに異物を取り込んでいる(下)。


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このページは、「健康ナビ2003年2月、3月号より」を引用して作成しています。